今なぜ外国人材か? - 日本で活躍する外国人材の現状と実態

倍増する外国人
法務省によれば、2018年末時点で、日本には273万人もの外国人が居住しており、これは全人口の2.16%に相当する。
また、厚生労働省によれば、2018年10月末時点で国内に147万人もの外国人労働者がおり、日本の労働人口の2.21%を占めている。
2010年頃の夫々の割合が1%程度であったことからして近年の外国人材の日本での増加ぶりが目立っている。
同様に、インバウンドと呼ばれるいわゆる日本を訪れる観光客など短期滞在者の数は2018年には3千万人を超え、安倍政権はオリンピックイヤーの2020年に4千万人を目指している。 6-7年前には年間800万人に届くかどうかというレベルであったのでこちらは倍増どころの増え方ではない。
とはいえ、外国人居住者や就労者の割合が全体の3分の1以上のシンガポールや、10%を超える欧米の国々とはまだ比べるまでもない。
インバウンドに至っては日本の人口の半分もないフランスが、日本のインバウンドの倍以上もの訪問者を毎年受け入れている。
外国人就労に対する日本の立場
日本ではこれまで外国人就労者を積極的には歓迎してこなかったといえる。
日本政府のスタンスとしては、日本人でできる仕事は日本人で行うべきというもの。
現在、外国人材が日本で就労を希望する場合、法務省が発給する在留資格は以下のようなものがあるが、基本的には日本人ではできない或いは外国人材の方が優れている特定の職能を持っていることが前提となっている。
在留資格の種類
「高度専門職」 高学歴(修士以上)、高職歴(資格)を持ち、日本で、高収入で雇用される研究者や技術者、経営者の在留資格で他の資格にはない様々な優遇措置がある。
「経営・管理」 日本にある会社の経営者として訪日する外国人や日本で起業する外国人のための在留資格。
「教育」 日本の小中高など学校で語学教育などの授業を受け持つ外国人のための在留資格。毎年日本政府が行う外国青年招致事業のJETプログラムでは5千人を超える外国人材が日本中の学校で語学教育に参加しているが、彼ら、彼女らの在留資格が「教育」である。彼らの多くはこの「教育」期間終了後も国内で職を探して日本に留まろうとしている。
「技術・人文知識・国際業務」 日本企業が外国人材を採用する場合に要件となる就労ビザとしては最もポピュラーな資格となる。大学或いは高等専門学校を卒業し、理工系であれば機械や電子・電気或いはITの技術者、文系であれば語学力を生かした貿易等国際取引担当業務などが想定される。
「興行」 外国人の俳優、歌手、プロスポーツ選手が日本で活動する場合の資格となる。大相撲の横綱白鵬もモンゴルから来日当初はこの資格であったものと思われるし、プロ野球の助っ人外国人プレーヤーもこの資格と考えられる。
「技能」 外国料理の調理師、スポーツの指導者、日本のエアラインのパイロット等に従事する外国人材の在留資格。ラグビー日本代表の監督のジェイミー・ジョセフの資格は恐らくこれとなる(奥様が日本人でなければ)。
「特定技能」 昨年新設された資格で建設現場や介護、自動車整備など人手不足が顕著な14分野に限って相応の現場技能を持つ外国人材の就労を認める。
「技能実習」農業、漁業、建設・製造業など様々な日本の産業の現場の技能をOJTベースで学び、身に着けて母国の発展に役立てるという前提で途上国の中卒・高卒の外国人材を受け入れる資格。他の就労資格と異なり、3年乃至5年の実習期間を終えると母国に戻らねばならず、資格の更新はない。
「留学」 日本の大学への留学のための資格である。就学がメインの活動であるが、週28時間まではアルバイト活動も認められる。
「家族滞在」 技能実習と特定技能の一部を除き、前出の様々な在留資格を持つ外国人材が扶養する家族の在留資格で、就労は認められないものの週28時間までのアルバイト活動は可能である。
「日本人の配偶者等」 日本人の女性を妻とした外国人男性、或いは日本人男性を夫とした外国人女性の日本での就労を可能とする在留資格である。
他にもいくつか在留資格のカテゴリーはあるものの、企業として外国人を採用したり、活用したりする場合に専ら対象となる在留資格は上記の中のいずれかとなる。

今なぜ外国人材か?
ここで改めて今なぜ外国人就労者が急増し、注目を浴びているかを考えてみたい。
確かに日本が直面する少子高齢化に伴う人手不足やインバウンドがもたらす大きな経済効果も背景としてあるであろう。ただ、本稿で注目したいのは海外の若者から見た「チャレンジの場」としての「日本」の注目度が高まっていることである。
プロ野球、大相撲、高校駅伝、サッカー、ラグビー、ゴルフ、芸能界から教育界、伝統工芸にいたるまで日本で活躍する外国人材が増えている。 日本の国技で神事でもある相撲の頂点に立つ日本相撲協会は当初は対外的に最も閉鎖的であったものが、徐々に外国人に門戸を開き、大相撲は今や外国人材抜きでは語れない。 昨年のラグビー日本代表ワールドカップでは日本代表チームの外国生まれのチームメイトとの“ワンチーム”が象徴的であった。 スポーツ界には日本が昔よく言われていた“超閉鎖市場”の印象はなくなっている。
サブカルチャーから料理を含め、海外における日本文化の理解が進んでいることと、日本人の方の外国人慣れ(?)による懐の深さも外国人の活躍の場が広がっている理由となっているのではないであろうか。
外国人材に対するビジネス界の懐の深さは?
翻ってビジネスの世界ではどうか? 日本国内で活躍したビジネスマンとしては日産を立て直したカルロス・ゴーン元会長や、ソニーのストリンガー元社長といったトップがいたものの、大相撲のように下積みから中核やトップリーダーに育っている外国人はどれくらいいるのであろうか。
日本に興味を持ち、日本語を学んで日本でまず勉強をしようと留学してくる学生数も着実に増えていて、現在およそ30万人もの有意な外国人の若者が国内で学んでいる。 ただ、その内のわずか2-3割しか日本で就職できていない問題はどこにあるのであろうか。
筆者は2013年に日賑グローバル株式会社をつくり、外国人材の日本企業への紹介、入社後の定着支援そして外国人材の戦力化研修サービスを提供してきている。自社としてもこれまで中国人、ロシア人、マレーシア人、中国人(マカオ)を採用し、協働してきた。
次回からその経験に基づき外国人材と日本企業との関係について気づいた点や事例などを共有させていただき、外国人材の「採用」を検討されている読者や、既に採用されている読者が外国人の「育成」や「活用」を検討される際の参考に供したい。