2人のビジョナリー その① ジェフ・ベゾス
Updated: May 14, 2020
最近

日米夫々のビジョナリーの代表的経営者の孫正義氏とジェフ・ベゾス氏についての本を読みました。 どちらも本人へのインタビューでもなければ身内・インサイダーからの取材でもなく、一般公開されている情報から客観的に両リーダーの考え方や方針を分析し、読者の参考に資する目的で著されています。
日米の経営スタイルに関するありがちなステレオタイプとしては、アメリカの方が短期成果型、株主重視的、金融・財テク重視的で、日本の方が長期永続型、社員・顧客重視的、実業重視的なイメージがありますが、
『ベゾスレター - アマゾンに学ぶ14か条の成長原則』Steve Anderson著(すばる舎)で語られているベゾスは1万年時計を作って「自分亡きあと」のアマゾンが長期永続することを想定しています。そしてベゾスは顧客のニーズである「低価格」「品揃え」「短納期」にこだわり、様々な切り口からこれらのニーズを掘り下げ、無料配送、マーケットプレイス、アマゾンプライムといったサービスを生み出すことで業容を拡大していきます。
さらには顧客が自分ではまだ気づいていないニーズを新たな「カスタマーエクスペリエンス」として創造するべく研究開発に多大な投資をしています。 その結果生まれたのがキンドルであり、アレクサでありAWSです。
そして社員重視の姿勢として、パートを含め60万人にも及ぶ社員への福利厚生の充実と共に、特筆すべきは、業務と直接関係があろうがなかろうが、社員が興味を持った資格や趣味的スキルの取得に要する費用の95%を会社が負担する制度です。如何なる分野であれ、社員が興味や好奇心を伸ばして「成長」することがアマゾンをして新たなカスタマーエクスペリエンスを生み出し続ける原動力になるということなのでしょう。
日本でよく言われる「初心忘るべからず」「原点回帰」をベゾスは最も重視し、Day 1というキーワードを随所で用い、本社ビルの名前もDay 1ビルというそうです。
創業時の緊張感、使命感を大切にするという以上に、「Day 2になると企業は劣化する」という強烈な危機感の下、Day 1であり続ける努力をするということなのだそうです。
日本の「日々是新」のニュアンスよりも「1万年生き残り続ける」ためのDNA的基本動作として会社全体に刷り込んでいるようです。
アメリカではエレベータースピーチと言って、たまたま同じエレベーターに乗り合わせた会社幹部に乗っている間の数十秒で自分と自分の仕事のアピールをする瞬発力が求められるなどと言いますが、レポートもコンパクトにまとめること、特にエグゼクティブサマリー(要約)が大切になります。プレゼンもアメリカ人はビジュアルと数値を前面に出した分かりやすい説明が上手なイメージがあります。 ところが、アマゾンでは紙1枚どころか6枚にびっしりと案件の内容を文章で記させるそうです。そして経営会議でベゾスを含め参加メンバー全員は最初の30分間を使ってこの6枚の資料に目を通し、そこからそのプロジェクトについて討議するそうです。
かくのごとくアメリカ企業のステレオタイプとは真逆のイメージのアマゾンの経営ですが、ベゾスの使命感はいま宇宙に向かっているようです。
彼がAmazon.comのビジネスを思いついて創業した段階でインターネットや通信回線、そしてUPSやFedExといった配送サービスのインフラは既に整っていて、その恩恵のおかげでアマゾンの反映があったことを深く認識しています。 そして、将来の世代が宇宙に活躍の場を求めてチャレンジすることを支えるためのインフラを構築しておきたいという思いの下、ブルーオリジンという別会社を作って活動しています。
社会や前世代の恩に報いるという彼の姿勢は二宮金次郎のそれを彷彿とさせるものがありますね。