「文化の日本人と血の日本人」荻野アンナさんの講演録から感じたこと

Updated: May 14


「文化の日本人と血の日本人」荻野アンナさんの講演録から感じたこと ‐ 外国人材アクセス.com

フランス文学者で芥川賞作家、慶応義塾大学文学部教授の荻野アンナさんはアメリカとフランスの国籍を持つ父と、日本人の母と共に日本で育ちました。


『日本文化へのまなざしー司馬遼太郎記念講演会より』(大阪外国語大学・産経新聞社編、河出書房新社出版)に掲載されている彼女の講演録「日本とフランス」[1] では、生粋の日本人ながら外見が外国人に見える荻野さんの日本で受けるステレオタイプと、彼女がフランスに留学した際に受ける日本人が持っているであろう日本文化への期待と現実のギャップについてのエピソードに基づき彼女の文化論が語られていきます。

そして結論ともいえる、「文化の日本人、血の日本人」というサブタイトルで以下のように締めくくっています。



「能・文楽・歌舞伎・・・連綿と続く芸能の流れを、われわれは知らず知らずのうちに受け継いでいるのでしょう。名もない大衆演劇の小屋で演じられている劇でも、伝統につらなるすばらしい空間表現を実現している。われわれは日本人として生まれて、自然にそういうものを会得しているようです。


ただ自然と会得したものが、文化として教養にまで高められるためには、やはり出会いが必要です。 私の場合、最初の出会いはフランス留学であり、その次に太陽劇団 [2] との出会いがありました。すごく皮肉で逆説的なことですが、日本に影響を受けたフランスの劇団が演じているものを見て、私は日本の演劇表現の独自性に開眼したのです。


そういう出会いがなく、知識として、日本人だから知っていなければいけないという発想で、無理やり文楽を見ても、ピンとこなかったと思います。日本人として自分の中に眠っているさまざまな要素が、外と出会うことによって目を覚ましたら、そこから自分の中で教養に高めていくための努力がはじまる。私はそれは大いにあっていいプロセスだと思うのです。血は色々混じっていますが、日本で生まれて育った私です。まだ自国の文化をきちんと引き受けるには程遠いですが、無知な分、可能性も残されていると思いたい。


ドナルド・キーンさんは京都に留学しておいででしたが、四十数年前の大阪を良くご存知です。しょっちゅう、文楽を見に来てらしたからなんです。そもそも先生の博士論文は「国性爺合戦」がテーマだったそうです。そのようにして、我々が忘れているものを外の方が掘り起こして下さっています。「外」と言いましたが、私はキーン先生は日本人だと思っています [3]。 生まれはアメリカですが、文化的には日本人です。私は日本人に生まれて、文化的には半分フランス人の状態から、徐々に伝統にも目覚めている、といったところでしょうか。


文化の日本人と血の日本人と、共存するのが一番素晴らしいと思うのです。外の文化というのは、何もフランスに限りません。私の場合一応仏文であり、さらにフランスの劇団のおかげで文楽を発見したといういきさつがありますが、どこでもいいんです。どこでもいいから日本のことを知っている文化の日本人の方が、我々にいろいろな発信をし、それに我々が反応する、そうやって血と文化の両方からいいところを取った本当の日本人が生まれると思うのです。 ・・・以下省略」



彼女のお話の「文化の日本人」を「日本が好きで或いは日本に興味をもって日本に来た外国人材」と置き換えれば、彼らと共に仕事をすることの価値や意義が見えてこないでしょうか? 即ち、外国人材と共に仕事をすることで日本人である自分の血に流れる文化的特徴に気づかされ、自分というものや自社、自国を客観的に深く考察できるようになるのではないでしょうか? 


日本人だけの職場では日本人としての自分、日本の会社としてのわが社、といった切り口で振り返る機会はあまりないですね。そして「考え方」も日頃「当然」と思っていることが、実は「日本人の常識、わが社の常識」であることにはあまり気づきませんね。 外国人材がもたらす異なる考え方や発想から様々な考え方に社長や経営幹部、上司が理解を示すことで職場に従来と異なる発想があっておかしくないと思う「謙虚さ」が生まれてくるのではないでしょうか? その「謙虚さ」は自分と異なる考えや意見に対する「傾聴」の姿勢を生み、それはその人の思考の懐を広げるだけでなく、職場の相互信頼関係を高めてくれるのではと思います。


そしてそうした信頼関係に育まれて日本の職場でのびのびと成長した外国人材は、荻野アンナさんが言う「文化の日本人」で紹介されていた日本文学者のドナルド・キーンさんのように、「外」に対してその会社、そして日本の特長、面白さ、良さを分かりやすく宣伝をしてくれると思うのです。


日本企業が大切にする現場において、「文化の日本人」たる外国人材と「血の日本人」たる日本人社員が良い「化学反応」を起こすことがアンナさんの語る「血と文化の両方からいいところを取った本当の日本人が生まれる」のではないでしょうか?


その「化学反応」を起こせるのは唯一経営幹部の経営革新の思いであり、その結果「本当の日本人」を増やしていくことがグローバル化やIT化でネットワーク化の進む世界において日本企業を新たな成長に導く原動力になると信じたいと思います。



[1] 2001年9月29日大阪国際交流センター大ホールにて実施

[2] フランスの劇団で「堤の上の鼓手」は日本の文楽の影響を受けている。

[3] 2011年3月11日の東日本大震災の後、日本国籍を取得されている。

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